タクシー運転手が今でも覚えている、お客さんからのちょっとした気遣い

タクドラの小ネタ

こんにちは、塩っペです!

タクシー運転手をしていると、不意にお客さんからのありがたいお気遣いをいただくことがあります。お気遣いとまではいかなくとも、ありがたいなぁ、助かるなぁと思うことも多々。

タクシー運転手がモヤっとするお客さんの優しい気遣い
チップなどの嬉しい気遣いなどがある一方で、あまり求めていなかったりするものもあります。今回はそんな「モヤっと」したお客さんからの気遣いをご紹介。

以前こんな記事は書いていたんですが、モヤっとだけを書いておきながら何なら嬉しいのかを書くのを忘れていました。こいつぁ失敬!

ということで今回は、タクシー運転手(というか僕)がされると内心喜んでいるお客さんの行動を書いていこうと思います!

僕が感謝したお客さんたちへ

七隈の広さを教えてくれたお婆ちゃんへ

「博多駅まで」

「天神まで」

「七隈まで」

行先の伝え方はいろいろありますが、「地名+まで」がやはり一番多いです。というかほとんどがそうです。

だけど1日乗務すれば3人くらい、すごくわかりやすい伝え方をしてくれるお客さんがいるんです。

「博多駅の筑紫口まで」

「天神3丁目の松屋までお願いします」

こう言ってもらえたら、すごくありがたいんです。

ひと口に博多駅、天神って言ってもそれはあくまで地名だったり広い範囲だったりします。その中のどこで降りたいのか、どこを通っていきたいのか等の情報が、地名だけだと掴めないんです。

天神を例に挙げるなら、国体道路なのか明治通りなのか、はたまた昭和通りなのか。渡辺通りの奥か手前か。

だから僕に七隈の広さを教えてくれたお客さんは今でも覚えています。

「七隈までお願いね。だけど、ごめんなさいね。七隈1丁目なの。だから結構近くだわ。鶴亀薬局、お分かりになるかしら。そこから曲がってほしいの。」

末永文化センターがある1丁目、福岡大学がある8丁目。南北に3kmほどがすべて七隈という住所だとは、新人のころは知りませんでした。

だから驚いたんです。なんでわざわざ「ごめんなさい」なんて言うんだろうって。七隈ってここからなら結構距離があるじゃんって。

そしたら本当に近くて。あれ、もう降りるの?なんて拍子抜けしました。

優しいお婆ちゃん、前もって細かく教えてくれてありがとうございました。

おかげで鶴亀薬局という目印があること、飯倉旧道という道のこと、そして七隈は広いんだから「とりあえずビール」のノリで中村大学前から曲がっておけばいいわけじゃないことを知りました。

乗ってすぐ、声をかけてくれるお客さんへ

挨拶を返してくれて、声までかけてくれるお客さんって嬉しいんです。

え?そんなこと?って思うでしょ。実はすご~くありがたいことなんです。接客業の経験がある人なら分かってもらえるんじゃないでしょうか。

僕はいつも乗車時には「(時間に合わせた挨拶)+お待たせいたしました!」という感じでドアを開けています。アプリ迎車の時はこれに合わせて予約確認も済ませるんです。

その時に「おはようございます~、お願いしま~す」なんて言って乗って来てくれたらすごく嬉しくて。

変な言い方ですが、「このお客さんとの間には壁があまりないな」と安心するんです。愛想のいい人って言うか。こちらもできる限り快適に過ごしてもらおうと頑張れるんです。

逆に何を言っても返ってこない人も一定数乗ってくるんですが、やっぱり寂しい。

警戒されているのか、挨拶の必要がないと思われているのか。真相を知るすべはありませんが、ふんわりと投げたボールを受け取ってもらえず、そのまま遥か彼方に飛んで行っていくようで。

そういうことがあるから、ドアを開ける瞬間って未だにどうしても緊張してしまうんです。1度の乗務で40人、それが月に12乗務だから1か月に換算すると480人乗せている計算です。それでもやっぱり慣れません。

新人のころよりは幾分かマシで、お腹が痛くなることはなくなったってくらいです。

「こんにちは~、予約した○○です。」

「元気いいねぇ~、よろしく!えらい若いなぁ!」

「止めにくいところでしたよね、ごめんなさいこんなところで!」

様々なかたちで声をかけてくれる皆さんのおかげで、僕の緊張はほぐれています。ありがとうございます。

南区でご乗車の素敵なママさんへ

ゴミをちゃんと持って降りてくれる。

お子さんの靴を先に脱がせておいてくれる。

地面に置いていたものは足元に置いてくれる。

どれも些細なことなんですが(というかゴミに至っては当たり前とさえ思うんですが)、降りた後で後部座席をチェックして汚れが一つもないとすごく安心するんです。

特にお子さんの靴。

どうしても大人みたいに座れないから、靴とシートの距離が近くなりがちなんですよね。だから乗り込むときに座面に付いちゃいそうになることがあって。そのまま奥に移動されるときなんて、シートの上をハイハイしていきそうな子が多くてハラハラしています。

いくらその子が可愛かろうと、靴の汚れは可愛くないですからね。笑

だけど一度だけ、「神様、仏様、お客様!」って思ったママさんがいたんですよ。

お子さんを一度シートにちょこんと座らせたら、お子さんの靴をさっと脱がせてくれて。「シート汚したらいかんけんね~」って。

それだけでも十分ありがたかったんです。だけどそれからも、窓を触らないようにしてくれたりとにかく車内を汚さないようにと。

ちびっ子って、窓の外を見たがるんですよ。その時に無意識に窓を触ってるんですよ。たまにお絵描きしてる子もいるんですよ。

僕も小さいころよくやってましたし。ドラえもんなんて何回描いたことか。

だけどこの仕事をして知りました。子どもの手って、めっちゃ跡が残る。このママさんはもうご存じだったのでしょうね。そしてその先に、僕が窓を拭く姿まで想像したのかもしれません。

なんてありがたい。後光が射して見えました。

この場を借りて、再度お礼を言いたい。南区某所からご乗車のママさんへ。車内へのお気遣い、本当にありがとうございました。

タクシーってね、本当にいろんな人が乗るんです。このママさんのような方もいれば、こんなところにカップを置いて、それを降り際に指摘したら「いいでしょ、これくらい。捨てといてよ」なんて言う不届き者も乗ってきます。絶対わざとだろ。言われんかったら何食わぬ顔で置いていくやろ。むしろタクシーの中に捨てるつもりで飲んでただろ。

あのママさんの爪の垢を煎じて、バケツ1杯くらい飲ませてやりたいものです。アッツアツの状態で。

「ごめんね~、小銭だらけで〜」

なぜかお婆ちゃんに多いんですが、財布に貯まりにたまった小銭をこれでもかと出してくれるお客さん。

お客さんからしたら「数えるのも面倒だろうし、かさばるし、私の財布を軽くしたいがためだけに申し訳ない」くらいの感じなのかもしれません。

だけど、小銭たくさんってすごく助かるんです。(1円玉と5円玉は除きます)

多くのタクシー会社では、釣銭の準備は乗務員の私金で行っています。つまり自分のお金です。それを両替して持っています。

キャッシュレス決済がこれだけ普及したので、昔よりは減ったんだと思います。だけど今でも半数が現金決済。だから「100円玉が残り少ない…ピンチ…!」ってことにもなったりします。

そんな時に現れる「小銭で財布が重い婆ちゃん」は救世主です。

迷子になったメイ探しに協力してくれるネコバス。

三蔵法師がやられそうになった時に出てくる孫悟空。

のび太を鼓舞して奮い立たせてくれるジャイアン(映画版)。

そんな心強い存在です。空っぽ直前だった釣銭ケースがいっぱいになるくらいの小銭を置いていってくれます。

あと5枚しか100円玉がない状況で、1,500円を全部100円玉でお支払いいただいたお婆ちゃん。お元気ですか。あなたのおかげで何とかその日の乗務中に釣銭が切れるアクシデントは防がれました。この場を借りてお礼申し上げます。

おそらく大方の運転手にとって小銭は、それくらいありがたいものなのです。

エールをくれるキッズたちへ

タクシーには子どもたちもたくさん乗ってきます。いろんな子が乗ってきます。

子どもたちって、すごいんですよ。めちゃくちゃ純粋で。大人みたいにややこしいこと考えず、どストレートに言いたいことを伝えてくれますからね。

このブログでも何度か記事を書いてきました。

運転手さん、頑張ってください!
住宅街からとあるとある病院まで。親子連れでした。小学生くらいの男の子とお母さん。男の子の鼻がズルズル。風邪を引いちゃったんでしょうね〜。学校を休んで病院へということみたいです。その割には…。「天神行きのバスだ〜」「ここって西新だよね、お母さ…
父の名は~ごっこ遊びで悪役にされた父親の話~
美女と野獣を見ながら独特のごっこ遊びに興じる親子。微笑ましい家族の一コマでしたが、キャスティングを聞いて雲行きが怪しくなりました。
タクシーで無邪気なお子に癒された塩っペ
4月は閑散期。お客は見つからない、アプリも鳴らないイライラで荒んだ塩っペを癒してくれた子どもたちの話です。

その中には特大の癒しをくれる子がいるんです。「頑張って!」って応援してくれる子、お父さんを悪役にする物語を考えちゃう子、初めてのタクシーにはしゃいじゃう子。

それに、お客さんじゃなくても通りがかりのちびっ子が手を振ってくれたりもして。手を振り返したら全力で喜んでくれて。

バスの中の子が手を振ってくれたから、調子に乗って変顔したんです。そしたら大声で笑っちゃったんでしょうね。前に座っていたおじさんがびっくりしていました。おじさん、ごめん。

塾に迎車で呼ばれて行ったら、子どもだけで乗ってくることもあります。親御さんがGo Pay決済にして配車してくれたようで。立派ですよ~。一人でじっと乗ってますから。

たま~に親の悪いところを煮染めたようなクソガキさんも乗ってきますが。まぁ、ある意味子どもたちも被害者だなって思ってます。そうして行儀の悪い子たちが育っていくんだなぁって。

おっと、話が逸れました。

可愛く純粋で、それでいて立派な子どもたちへ。いつも癒しと笑顔をありがとう。

これからもすくすくと、健気に正しく育ってくださいね。

…なんか保育園の先生からの手紙みたいになりましたね。笑

次行ってみましょう。

スナックのママさんたちへ

先ほどは子どもたちのママさんに向けたメッセージをしたためましたが、街には別のママさんもいます。

「ほら!ちょっともう山下さん!運転手さん待ってるから!」

「も~、その話は今度来た時に聞くって~!はよ準備して出といで!」

「あら~!運転手さんこの前の!いつも来てくれてありがとうねぇ!ちょっと待っててね♪」

夜の街を彩る、オトナたち向けのママさんです。夜になると配車アプリで呼んでくれるスナックや飲み屋の皆様。その中でもこちらを極力待たせまいとしてくれるママさんがいるお店はありがたいものです。

スナックのママなのに本物のママ(というかもはや母ちゃん)みたいな勢いなんですよ。

「ほら!あんたはよ行かな遅刻するばい!!」

って寝坊した子どもを見送る感じ。送り出すどころじゃない。もう追い出すってレベルです。

「運転手さん待ってあるよ!はよせなあんた、歩いて返らせるけんね!」

「ちょっと待ってよママ~、そげん早よ歩ききらんったい」

「最近運動しよらんっちゃなか~?あたしより若いっちゃろ~?シャキッとせな~」

そんなやりとりは見ているこちらもなんだかほっこり。現着してから会計させて、出てきたかと思ったら店先でハグしたりなんだかんだする店も多い中で、いつでも乗れる状態で呼んでくれるお店は本当にありがたい。

僕がよく走るエリアにもそんなお店が数店あります。アプリを受け取ったら「よろしくお願いいたします」って丁寧にメッセージをくれるお店です。

そんなお店から乗ってくるお客さんはトラブルも少なくて。きっとママさんの人柄がいいお客さんを呼んでるんだろうなぁって思います。

そんなお店は大切にしたいもの。いつか、遊びに行ってみたいなあなんて思っています。

とある教会の牧師さんへ

あれは、僕が新人3か月目のころでした。今泉で手が挙がり、中年の男性がご乗車。

「運転手さん、ちょっと遠いけどね、今宿までお願いします」

まだまだタクシーの仕事にも不慣れなときに引いた、糸島方面。嬉しいやら緊張するやら。そう思っていたらお客さんは電話に出てなにやら話し始めました。

警固の交差点に差し掛かる少し前で突然「運転手さん、ごめんね!ちょっと博多駅に寄ってもらっていい?渡し忘れたものがあって…本当にごめんね!」

急遽、博多駅に向かうことになりました。

「うちのゼミ生なんだけどね~、そそっかしくて困っちゃうよ」と言いつつも、どこか嬉しそう。聞けばその方は大学の教授で、その日は3月1日。つまり卒業式後にゼミのみんなで飲み会だったそうな。

その話を聞いているうちに博多駅に到着。博多口の乗り場に一旦つけて、無事に用事は済みました。「社会人、頑張ってね!」と手を振る教授。送り出せるのが嬉しくもあり、寂しくもあるんだろうな。そんな気持ちに思いを馳せつつ、今宿に向かいます。

「先ほどの会話を聞いていたら、僕の学生時代も思い出しちゃいました。やっぱり大学の4年間って、思い出がたくさんあって忘れられないんですよね」

「どこの大学だったの?」

「西南の英文学科でした」

「え?そうなの!僕も西南で教えてるんだよ!」

僕の出身大学の方でした。

「英文学科ってことは、2020年までに卒業したんだね。学部編成で名前が変わっちゃったから」

そう。僕がいた文学部英文学科は、外国語学部となりました。

「学部長の伊藤教授、すごい人だけど怖いんだよねぇ~笑」

そうなんですよ~、講義はすごく面白いし楽しみだったんですけど如何せん厳しい方で…笑

大学トークで盛り上がりました。

「もうね、運転手さんが行きやすいように走ってくれていいから!そうだ、博多駅まで来ちゃったから、都市高で行こう!」

呉服町ランプから、夜の福岡都市高速へ。

料金所で通行料を払って、領収書を受け取ります。係のおじさんに「お疲れ様です~!」と挨拶して、天神・西九州道方面へと合流。

「えらいよねぇ、立派に仕事してるんだよねぇ。料金所のおじさんにああやって挨拶する運転手さん、君が初めてだよ。だけどさ、すごく大事。今3か月目だって言ってたよね?君なら大丈夫だよ、いい運転手さんになれる。というかもうなってる!」

博多駅で見送った学生さんも立派になってほしいという、願いにも似たような気持ちも込められていたのでしょうか。

その後も教授だからこそ知る大学の裏話なんかを聞かせてくれました。あの先生が不祥事でも起こしたら告発できるくらいの情報は持ってるよ、だからニュースになってたら思い出して笑ってね、なんて物騒なことも。今のところ何も聞いていないので、きっと不祥事は起こっていないんだと思います。

そして到着したのは今宿にあるバプテスト教会でした。大学の教授であり牧師さんなのだとか。

「いやぁ、素敵な帰り道だったよ。ありがとうね。もし困ったことがあって、どうしようもなくなったらいつでも教会においで。キリスト教徒じゃなくてもいいから。いつでも僕を訪ねておいで。」

そう言って降りていかれました。

教授、お元気にされていますか?あの時は本当にありがとうございました。あの日の新人ドライバーだった僕も、4年生になりました。

「君はすでにいい運転手だよ」というあの言葉が自信になりました。嫌なお客に当たったりして挫けそうな時も、グッと踏ん張る支えになっています。

「いつでも訪ねて来ていいからね」と言ってくれる人がこの街のどこかにいるってだけでふっと心が軽くなる気がします。

今でも3月が来ると思い出すんです。できればまた、タクシーの中でお会いしたい。またのご乗車、お待ちしております。

まとめ!

ネタとして盛り上がるから、どうしても嫌なお客さんがピックアップされがちなタクシーの仕事。ですが実際はありがたいお客さんばかりです。

年にほんの数回、飛びぬけて嫌なお客さんに当たることがありますが、今回取り上げたお客さんたちのことを思い浮かべればなんてことはありません。

いろんなことを教えてくれるお客さん。
車内をきれいに使ってくれるママさん。
釣銭の危機を救ってくれる救世主婆ちゃん。
いつも常連さんを車内に叩き込んでくれるスナックのママさん。

そして、新人のころに「君なら大丈夫」と背中を押してくれた教授。

その人たちからもらったものを思えば、嫌な思い出なんて小さい小さい。

どうしても自分の中で消化できないことがあれば、Xフォロワーのみなさんや諸先輩方に聞いてもらっています。誰かに話すとスッキリするんです。

そしてリフレッシュして、気持ちを切り替えて、リスタート。その先にまたお客さんは待っています。次のお客さんはど~こだ!

今日は以上です(`・ω・´)ゞ

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