こんにちは、塩っペです。前回に引き続き、タクシー運転手のきついところをご紹介していきます。今回は乗客対応編です。
タクシー運転手は「運輸旅客業」なのか「接客業」なのか。長年にわたり議論されてきた問いです。もちろん法律だとかそういう方面では前者なのでしょう。だけど仕事の性質で言えば後者。なので聞かれたらこう答えると思います。「旅客と接客のハイブリッド」だと。
乗客ってひと口に言ってもいろいろいます。急いでいる人、ゆっくり行きたい人、老若男女、酔っ払いでテンション上がっちゃってる人、素面なのに酔っ払いよりもテンション上がっちゃってる人。
いろんな人がいる街だから、いろんなお客さんがいます。そんな中にはやっぱりいろんな人がいまして。今回はタクドラをやっていく上で必ず対応することになるお客さんと、僕が気を付けていることを紹介します。
【プレッシャー大】特別な配慮を必要とするお客さま
公共交通の一端を担い、人々の移動を支えるタクシーという仕事には福祉的な側面もあります。その中には乗務員のサポートが必要だったり、なくてもいいけれどあったほうがスムーズかつ安全に乗り降りができるものも。
高齢のお客様への対応
タクシー利用者の中でも多数を占めるのが高齢のお客様です。1回の乗務のうち半数くらいは占めるんじゃないでしょうか。身体的な衰えが顕著となり、乗り降りに時間がかかってしまうため、スムーズかつ安全な乗降のための配慮が求められます。
乗車時:歩道に近づけつつ、広いスペースを確保しつつ…
歩道で待っていた場合には、限りなく近づけてからドアを開けるようにしています。歩道と車道の間にある段差での転倒防止だったり、後続車両が通れるようにだったりという理由からです。
杖を車内に放って、荷物を置いて、手すりに掴まって、よいしょっと。一つ一つの動作を分割して行わないといけないため、想像以上に時間がかかります。あと、特にお婆ちゃんに言えることなんですが、めっちゃ荷物多いんですよ。何日分の夕飯の材料買って来たの?今日お孫さん遊びに来てるの?ってくらい。だから余計に時間がかかります。
後続車両がずらーっと並んでいる状況では、お客さん自身も焦ってしまってこれまた転倒に繋がりません。ゆっくりでいいから確実に座ってもらう。これが大事です。
走行中:いつもよりもゆっくり走る
お爺ちゃんであれ、お婆ちゃんであれ、お年寄りはおしゃべり大好き。「今日はいい天気ね~」から始まって、病院の薬がなんとか、今日のご飯は炊き込みご飯だとか、歯は大事にせないかんよだとか。とにかくしゃべります。
そのおかげで僕は尿路結石の恐ろしさを知りました。あの時のお爺ちゃんの経験談には鬼気迫るものがありました。
夢中になって話すもんだから、どこで曲がってどこで止まるかの指示が遅くなるんです。
「じゃあ自分から聞けばいいじゃん、なんで聞かないの?」って思うでしょう?
聞く隙がないくらいしゃべるんです。おばあ、アンストッパブル。山本リンダもビックリ。もうどうにも止まらない。
だからどんなタイミングで言われても対応できるように、いつもよりもスピードはゆっくり。ブレーキは早め。急な右左折になっても車が揺れないように配慮しています。
降車時:ドアは絶対に確認してから開ける
料金を受け取って、レシートを手渡して、普通ならここでドア開スイッチを押すんです。
だけどどこにどんな体重をかけてるか分からないから、この場合に限っては必ずドアを開けることを伝えてから開けるようにしています。外側への転落防止です。もし転げ落ちたら人身事故になりますからね。
それに加えて、降りた先に段差があったり、自転車が来ていたりしたらそれも伝えます。とりあえず僕が離れるまでは何事も起こらないように。
「ドアが開きます。降りた先に段差がありますのでお気をつけて、ゆっくりお降りくださいね~。」てな感じで。
もちろんこうした配慮自体は嫌ではありません。むしろ安全に乗って、降りてもらうことも仕事の一部です。
ただ、後続車が連なっている状況や次の予約がある状況ではプレッシャーもあります。焦った結果事故になれば元も子もありません。
「急がなければならない」と「急いではいけない」の板挟みになるのは、タクドラならではの難しさかもしれません。
障がいのあるお客様への対応
高齢者以上に気を遣うのが障がいのあるお客様。僕の妹がけっこう重めの障がいを持って生まれたため、ハンデのある人が周りにたくさんいる環境で育ちました。なので人並みよりは慣れているつもりです。
あとユニバーサルドライバー研修っていう、タクシー協会主催の研修も受講したので知識としてもそれなりにあるほうだとは思っています。
だけど未だに思うんです。
難易度高すぎ。
その人その人によって、対応が違うんですよ。こちらにできる限りサポートをしてほしい人がいる一方で、自分でどうにかできるから手を出さないでほしい人もいて。言ってしまえば採点する先生によってテストの正解が変わるようなもの。むしろ正解なんてない時だってある。たぶんこれは何年経っても迷う時は迷うと思います。
僕の事例を紹介しますね。
視覚障がいを持ったお客さま
白杖を持ったお客さまがご乗車の時には、乗車、走行中、降車で気を付けることがたくさんあります。
どんな車種のタクシーかが見えないから、どこにピラーがあってどれくらいの高さに座面があるのかが分からない。
今どこを走っていて、この先どっちに曲がって、大きく揺れる箇所があったりなどなど、見えていないからこそ不安にさせてしまうことが多い。最悪の場合、車内での転倒に繋がります。
なので右左折や大きく車内が揺れるときには、その都度声かけが必要になります。「この先右方向にカーブします」「この先〇×3丁目の交差点を左折します」「この先車内大きく揺れます。ご注意ください」のように。
これがあるのとないのでは、車内での安心感が桁違いなんだそうです。
そして降車の時も、降りた先にはなにがあって、そこが歩道なのか道路上なのか、傾斜や段差があるのか、目的とする建物のどの地点に到着していてどちらに向かったらいいのか。何もかも視覚情報。つまりそのお客さまだけではつかめない情報。
そしてその間で起こった転倒などは多くの場合ドライバーに帰責します。
対応の中でも絶対のタブーとされるものがあって、絶対に杖を掴んではならないというもの。視覚障がい者にとってその杖は目と同義。それを掴まれるのはすなわち、どこに何があるかわからないのに目隠しされて強制的に引っ張られるようなもの。シンプルに恐怖。
そのすべてを背負うプレッシャーは想像以上。安全に送り届けたらすごく安心しますが、いつも以上に感覚を研ぎ澄まして運転するためどっと疲れもきます。
もちろん嫌なわけではありません。むしろ安心して利用していただくために必要なことです。ただ、その責任の重さゆえに神経を使う対応のひとつだと感じています。
【一触即発?!】トラブルに繋がりやすい乗客
前項ではどちらかとバリアフリー的な観点での難しさでした。ここからのほうがタクシーのあるあるかもしれません。トラブル系です。
クレーマータイプ
乗り込みの時点でなんとなく察することがあるんです。たぶんこの人クレーマーだろうなって。それか精神的に不安定なタイプで、一旦火が付くとどうにもならない人。所謂ヒステリックなタイプ。
やたらと高圧的だったり、ずっとイラついていたり、逆にずっとソワソワしていたり。こういうタイプに対する僕なりの攻略法はこちらです。
触らぬ神に祟りなし
余計な会話はしない。余計な配慮もしない。ただ淡々と走って送り届け、降りてもらう。だって何がトリガーになるかわからないんですもん。地雷原です。
以前スーパーからアプリで配車した50代くらいの女性がいたんです。ショッピングカートいっぱいに荷物があったからトランクを開けて積み込みを手伝おうとしました。その刹那…
「触らないで!!!!汚れるじゃない!!!!」
ものすごい剣幕で怒鳴られました。素手で触ったわけじゃないのに。白手袋してたのに。初対面の人間を汚れかバイ菌扱い。
食品ならまだ分からんでもないけど、中身は洗濯洗剤のアタック。むしろ汚れを落とすためのもの。たぶん極度の潔癖症だったんでしょうね。
善かれと思った配慮が逆効果になることもあります。だからこそ、相手を見極めながら接客をしなければならない。地理を覚えるよりも、運転技術を磨くよりも難しく、厄介かもしれません。
酔客対応
夜間に乗務するなら避けては通れない、それが酔客対応です。時期によっては昼間でも起こります。夏は特に。
ほろ酔いで気持ち良くなっただけの人なら、それとなく会話しているだけで何も起こらないことも多いです。でも会話の方向性を間違えば一触即発の事態になりかねません。
特に政治、スポーツ、宗教の話題はご法度。話を振られても当たり障りのない返答をして、自然な流れで話題を変えていく必要があります。
特に国民の関心が集まるような大きな選挙の前後は要注意です。
いつかの自民党解散総選挙の後に乗せた、ほろ酔いのおじちゃん2人組。後部座席でとある政党をべた褒めし、また別の政党を猛烈に批判していました。
あぁ…この話がこっちに振られなければいいなぁ…と思いつつハンドルを握っておりましたが、悪い予感って当たるんですよね。
「兄ちゃん、選挙どこに投票した?」と聞かれました。
僕が入れた政党を正直に答えれば、なんでそこに入れたんだ!!と口論になりかねずバッドエンド。
同じ政党に入れましたよと嘘をついても、その政党にそんなに詳しくないから結局バレてバッドエンド。
選挙どうしても行けなくって~と言ったところで、こんな世の中でも政治に関心がないのか。これだから若い者は!となりバッドエンド。
正解がない…!
その時は「当日急に熱出て…」と言って、行く意思はあったけど行けなかった感を出して逃げました。もちろん熱なんて出ていませんが、噓も方便というやつです。
できれば「どこに投票した?」ではなく「今日はいい天気ですね」くらいで勘弁してほしいものです。
会話がきっかけでのトラブルのほかにも酔客対応はあります。そのうちの一つが車内嘔吐です。
吐かせないような運転をするのはもちろんですが、既に泥酔していた場合は運転ひとつでどうにかなる問題ではありません。
嘔吐されてしまった場合、清掃費と休車損害の請求で揉めたり、車内清掃に時間がかかったり。精神的にも体力的にも相当の負担がかかります。ちなみに私の先輩の話では、車内嘔吐の清掃にかかった時間は最長で3時間とのことです。その3時間、ちゃんと走れていれば…。
接客トラブル、口論、車内嘔吐。酔客対応はタクシー運転手なら誰もが通る道ですが、できることなら毎回何事もなく目的地に着いてほしい。そう願いながらハンドルを握っています。
まとめ
今回はタクドラのきついところ【乗客対応編】でした。
タクシー運転手といえば、道を覚えたり運転技術を磨いたりというイメージを持たれがちです。もちろんそれも大切ですが、実際にやってみるとそれ以上に難しいのがお客さま対応だったりします。
予告なくやってきて、その場で瞬時に対応しないといけない。全部アドリブ。台本なんてあるわけない。
同じお客さまでも求められる対応はまるで違います。昨日の正解が今日も正解とは限らないし、佐藤さんに喜ばれたからって伊藤さんも喜ぶとは限らない。むしろお叱りを受けることだってあります。
だからこその面白さもあるんですが、とても神経を使います。正直言うと、ものすごく疲れることもあります。
それでも無事に目的地まで送り届けて、自分なりの精いっぱいの対応をして「ありがとう」や「助かりました」と言ってもらえた時には、その一言で報われた気持ちになります。
タクシー運転手は運転の仕事であり、接客の仕事でもある。やっぱりハイブリッド業だ。今回改めてそう感じました。
さて次回は「タクシー運転手ってきつい?福岡の現役タクドラが語るホンネ③【勤務時間・生活リズム編】」をお送りします。
昼夜逆転、20時間拘束、休日の感覚のズレなど。タクドラならではの生活面でのきつさについて書いていこうと思います。
今日は以上です(`・ω・´)ゞ

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