推されるタクシー、避けられるタクシー

乗務日誌

ここは中央区警固交差点。時刻は0時過ぎ。

土曜日なのだが客足は少なく、空車は多い。かく言う塩っペ号も空車である。大正通りから六本松方面へ左折。たまにここでもお客さんが待っていることがあるから。

木曜日にここで乗せたお客さんは別府経由筑前前原行きだった。美味しい距離を引けた場所に再度行ってみるのは割とタクドラあるあるなんじゃないだろうか。

しかし今日は土曜日。出勤している運転手が多いのか、空車だらけ。そうなると至る所で付け待ちをしているタクシーも多いのだ。

六本松方面に向かう警固町バス停には、既にタクシーが待っていた。そしてタクシーに乗りたそうな人がそちらに向かっていた。

これはしょうがない、諦めて次の乗客を待つか…。

すぐそこに止まっているタクシーに向かう女性。乗っちゃうよね~とか思いつつ見ていると、その女性を引き留めて、後ろのおっちゃんが僕に手を挙げてくれた。

すかさずハザードランプを点け、車を寄せる。

おっちゃんのお見送り。乗ったのは女性が一人。何事もなく車を出した。行先は壱岐団地。暇な日にはとてもありがたい距離である。

ちなみにバス停での路上駐車ですが、バスの運行時間外であれば駐停車禁止の対象外となるため場所によっては合法となる場合があります。六本松方面への警固町発着は23:34発の113番片江営業所行きが最終なので、OKです。

だからと言ってあんまり進んでしようとは思いませんが。時にはそういう戦法も必要なんでしょうけどね。駐停車禁止にならないとはいえ性に合わないというかなんというか。バスオタクの血がそれを良しとしないのです。

「私は前に止まってたタクシーでいいって思ったんですけどね、あのおじさん、いとこなんですけど、あっちはやめとけって言ってくれて~。すみませんね、変な止め方しちゃって💦」

確かに妙な止め方ではあった。目の前にタクシーが待っているのに、敢えて後続のタクシーを止めるなんて。きっと止まっていたタクシーの運転手からすると、舌打ちものだろうと思う。

「あの人、元はさっき止まっていたタクシー会社の運転手だったんです。もう十数年前なんですけどね。あの頃は警察から表彰されたりしてたんですけど、社長が変わったらなんでもアリな会社になったらしくて、それであっちはやめておけと…。」

確かにその会社は、いろんなところで悪評ばかり聞く気がする。Google Mapの評価が✰1.8という恐るべき低空飛行な弊社が言えることではないが。ちなみに気になって調べたら、その会社よりもうちの評価は低かった。どんだけ劣悪やねん、弊社。

 

そんな✰1.8の飲食店なら廃業待ったなしな弊社でも、一定の評価はいただいているのかもしれないなと思うことがある。

Goアプリの「会社指定配車」というのが、3か月に1度くらいの頻度で飛んでくるからだ。

複数選択ができるのであれば、何個か選んだ中にたまたまあったんだなと思う。だけどGoアプリの仕様では、タクシー会社は1つしか選ぶことができない。

会社指定配車を初めて取った時には、なんでウチみたいな小さい会社をわざわざ指定するのかと思っていた。

✰1.8を付けられ、台数も決して多くない。広告を打っているわけでもなく、大手のような知名度もなく、パンダタクシーのような独自の料金形態でもなく、MKタクシーのようなブランド力もない。

これだけないない尽くしの会社、僕なら選ばない。どんなところか分からない。不安要素だらけだ。

 

以前会社指定で配車してくれたおばちゃんが「あんたのところは、どの運転手さんに当たってもみんな気さくでいい人が来るのよ」と言っていたのを思い出した。

30代女性と書いてあったが、どう考えてもそれより10年は長く生きていそうな人だった。

「今まで何回Goでお願いしたかしら、たぶん月にそれなりの数使うんだけど、毎回あなたのところなの。あなたのところ、みんな楽しそうに話してくれるから」

気さくな人間と言われて思い浮かぶ顔が数名。

そしてこのおばちゃんに当たっていなくてよかったと思う顔が数名。

前者であれば好かれる理由も納得がいく。

そして後者であれば、一生嫌われてもおかしくない問題児たちだ。

会社指定配車だったり、どこかのタクシーと競合しても選んでもらえるのは、同じ会社に属する他の乗務員への静かな賛辞だということもあるのか。選んでくれる人がいるということは、おそらくウチの人の誰かが、選んでもらえるだけの仕事をしたということなんだと思う。

裏を返せば、競合して選ばれなかったということはそれだけの要素があるかもってことなんだ。

それなら僕は、選ばれる方でいたい。選んでもらえる要素のひとつになりたい。せっかく選んでもらえるなら、がっかりはされたくない。

別に選ばれなくても仕事はできるけど、選ばれるか否かが積み重なってじわじわと自社の首を絞めていくことになるのかもしれない。1回の乗務で1回選んでもらえないようになる。隔日勤務だと月に12回。全部ワンメーターだとしても、670×12回なら8,040円分のロスが生まれる計算だ。

長距離を1度引けば帳消しになりそうな金額だけど、こういうのってじわじわと、綿で首を絞めるように効いてくると思う。

過度な接客をする必要はないが、選ばれる会社になるための努力は怠るべきではない。

車内恋愛は推奨しないが、お客にモテる運転手になる必要はあると思う。

もっと言えば、お客さんの「推し」になりたい。

タクシーが増えすぎて競合だらけ。そんな中で生き残っていくに必要なのは、きっとそういうところなんだと思う。

…話は戻って、冒頭のお客さんを乗せたタクシーは壱岐団地に到着した。おっちゃんが予めGo Payにしてくれていたので、降車もスムーズだ。

「また、乗せてくださいね。おやすみなさ~い。」

そう言ってお姉さんは降りていった。僕がこの仕事をしていて好きな瞬間のひとつ。降り際の「また乗せて」は、再び出会うことが少ないタクシー運転手への「答え合わせ」だ。また乗りたいって思ってもらえたのだから。

あと少し続く閑散期。ひとつでも多くの「また乗せて」を稼いでいこうと思います。

フォロワーの皆様もご安全に!今日は以上です(`・ω・´)ゞ

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