招かれざる客…いや、そもそも客ですらないか…

乗務日誌

こんにちは、塩っペです。

今回の内容は虫が出てきます。日本で一番嫌われていると言っても過言ではないアイツが出てきます。

虫が苦手な方、お食事中の方、お気を付けください。※写真は出てこないのでご安心を。いらすとやの素材で頑張ります。

覚悟はできましたでしょうか。もし無理そうならこちらをご覧ください。

先日の乗務。この日は世間での給料日、華金、そして夏休みという条件が見事に揃い朝から乗客の多い日。しかも乗せる人乗せる人、皆さんご機嫌な方が多くて楽しく快調に仕事を進めておりました。

23時ごろには売上が5万円に到達。本当に7月なのかを疑っていた前回以前の乗務とは打って変わってとてもいいペースです。

唐人町で前のお客さんを降ろし、向かったのは西新。プラリバ前で手が挙がりました。

「こんばんは、お待たせいたしました~!」

ドアを開け、お客さんの様子を伺えるように左後ろを振り返りつつ車内にお迎えします。まだドアが半分も開いてない時、僕の左肩に何かが乗っているのに気づき、咄嗟に右手でパッと払いました。

ドアが完全に開き、お客さんご乗車。行先は別府駅方面。

「鳥飼3丁目の信号から右折しますね!」

経路案内まで済ませ発進。酔っ払いうごめく西新を後にし、流れるように車を走らせました。

そういえばさっき肩に乗ってたの、なんだったんだろうか。ホコリにしては大きかったしなんだか硬かったような…。

そんなことがふと気になりましたが、その後特に何事もなく目的地に到着。支払いを終えてドアを開けます。お客さんが見えなくなったのを確認して、塩っペは車外へ。

支払いの時に点けたルームライトはそのままに、手には小型ライト。入り込むとしたらどこか、それだけを考えながら5分ほど車内を確認しまくりました。

「気のせいやったんか…?それか探してる間に別のところから出て…。それならそれでいいが、これだけ探しても出てこんのは…。」

不安になりつつも、見つからないなら気にしたってしょうがない。気を取り直して運転席に戻り、いざ次のお客探しに。別府駅前を左折して六本松方面へ向かいました。

右後方を確認しようとサイドミラーを見た、その時でした。

細長い楕円形

黒光りするボディ

やたらと長い触覚

その時、塩っペは思い出した。左肩を払った時に感じた視線を。車内という密室で対峙してしまった恐怖を。

脳内に響き渡る『進撃の巨人』OP曲。

本能がヤツを倒せと言っている。全身の毛穴という毛穴が瞬時に反応して、産毛という産毛が軒並み逆立っているのが分かる。

「駆逐…してやる!!」

瞬時にハザードランプ作動。別府駅前に車を寄せ、後方に接近車両が無いのを確認して一気に運転席ドアを開く。

その刹那、事態を察したそいつはドアからボディに飛び移り、ドア下のフレームをこちらを嘲笑するかのように逃げていく。

即座に態勢を整え、左足の靴を右手に取り、外へとたたき出す。絶対に車内に入れるわけにはいかない。いや、すでに侵入は許しているのだが。

一度叩いて怯んだ隙に二発目をお見舞いし、ようやく道路上に飛ばすことができた。そこまですればもう車内に平穏は戻ったのだが、心の中からエレン・イェーガーが離れてくれない。

「駆逐してやる…!!!!」

形勢逆転し、人類の誇りと尊厳と安寧をかけた実にみみっちい戦いに勝利した塩っペ。しかし一度でも車内の平穏を乱したものに対して情けをかけるほど、塩っペはヤワじゃない。

道路上に放たれてもなお、微かに動くヤツはまさに正真正銘の「虫の息」であった。怒りと屈辱を右足に込め、地球の裏側まで響きそうな勢いで踏み抜いて戦いは幕を閉じたのだった。

お客さんが気づいてなければいいが。それだけが気がかりです。

エピローグ

「聞いてくださいよ~、車内にゴキ出たんすよ~」

帰庫して内勤にそうグチるのは、車庫に凱旋した塩っペ。当直は何かと僕を気にかけてくれる元気なじいちゃん。

「社内にはよく出るけど車内に出たっちゃあんまり聞かんねぇ~」と笑いながらダジャレを飛ばしてくる。

「あのままの調子やったら6万も行けたかもやけど、さすがにゴキが出た車内で仕事続けるんは嫌やし今日は帰りますわwww」

そう、あのあと3組ほど乗せたのだがやはり脳裏に焼き付いたあの光景はちょっとやそっとじゃ忘れることはできなかった。

六本松から乗せたお客さんが「近くてごめんね~」とチップで1,000円くれたので少し気分は晴れたのだが。

「そんな君にこれを貸してあげよう」

じいちゃんはそう言っておもむろにデスクの下からアースジェットを取り出した。

「1匹おるってことはまだ残党がおるかもしれんからね。撒いてきんしゃい。」

そのあと車内の至る所にかけまくったのは言うまでもありません。

夜の飲み屋街にはゴキがたくさん。昨日の乗務中にも屍と化した酔っ払いが転がっているのを何度か見ましたが、寝ているおじさんたちの体を這ったりしていないのか心配になるほど。

それだけの数のゴキがいて何かの偶然が重なった、もしくは(あまり考えたくないケースではありますが)前のお客さんと一緒に乗ってきちゃったか。どういう経緯で侵入したか定かではありませんが、この季節何が乗ってくるかわかったもんじゃありません。

予想外の招かれざる客を乗せても決して慌てず、冷静に対処したいと思う塩っペなのでした。

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